2014年1月23日木曜日

「速い」っていいこと?

 
 
 
 ある日の対話・作文クラスの授業です。

 
問いかけは、「速いってなんだろう?」でした。


アリー塾長    :   「 童話に、ウサギとカメが競争した話があったよね?ウサギは、本当はカメより速く走れる のに、途中で昼寝をしたから、カメに抜かれて、競争に負けちゃったんだよね。」    

「ウサギはカメより走るのが速い。速いって、何かと比べて、速いって言えるんだね。それより遅いものがあるから、速いって言えるんだね。」

アリー塾長    :   「 世界には速いものがたくさんいる。人間では、金メダルのボルト!動物ではチータが一番速い。」

「人間の作った道具も速い。」

「自動車や、新幹線や、ジェット機。」

「新幹線、乗ったことある?」

…小学校3年生の二人(男の子と女の子)はうなずきます。

男の子      :   「秋田に行ったとき、新幹線に乗った。すごく早く着いた。」

アリー塾長    :   「まだまだ速いものがあるよ。音!」

「地球が回ってる速さ。」

「人工衛星や宇宙船。」

「地球が太陽のまわりを回るのは、それよりもっと速いみたいだよ。」

「それから、もっともっと速いのが光!」

「光は速いよ。音よりずっと速いよ。」

「雷を思い出してみて。」

「ピカッと稲妻が光ってから、少したってゴロゴロっていう音がしてくるでしょ?」

…二人、感心して聞いています。

アリー塾長     :   「光は速いんだね。これからほかに見つかるかもしれないけど、今のところ、光より速いものはないって考えられてるんだって。」

「すごいね、光。月からの光は、一秒ちょっとで地球に届くんだって。」

…さて、ゆっくり一回深呼吸して、聞いてみました。

アリー塾長     :   「速いっていいこと?」

男の子・女の子   :   「いいことーっ!!」

…二人同時に元気よく答えました。

アリー塾長     :   「ほんとう?」
「なんで?」

男の子        :   「新幹線は速いから、早く行きたいところに行ける。だから、速いっていいこと。」

女の子        :   「オリンピックでは走るのが速い人が金メダル。だから、速いっていいこと。」

アリー塾長      :   「そっかあ、みんなは速いことはいいことだって思うんだ。」
「でもさあ、遅いほうがいいことってない?」

…しばらく間があきました。

…女の子が小さな声で話し始めました。

女の子        :   「ゆっくりやらなかったから、宿題をまちがえて、お母さんに怒られた。」

アリー塾長      :   「○○ちゃん、怒られちゃったの?」

女の子        :   「うん。急いでやったら、まちがっちゃったの。」

アリー塾長      :   「そっかあ。」

女の子        :   「だから、速くやることがよくないときもある。」

アリー塾長      :   「宿題は、じっくり時間をかけてやったほうがいいんだね。」

女の子        :   「うん。」

アリー塾長      :   「ほかにゆっくりのほうがいいことがある?」

男の子        :   「新幹線は行きたいところに速く着くけど、あんまり景色が見えない。」男の子が言い出しました。

アリー塾長      :   「景色?」

男の子         :   「散歩は歩くからゆっくりだけど、いろんなものが見られる。」

アリー塾長      :   「どんなものが見られる?」

男の子         :   「景色。よその家とか、生えてる草とか、花とか、木とか、ゆっくり見られる。」

アリー塾長      :   「景色がゆっくり見られるって楽しい?」

男の子         :   「うん。」

アリー塾長      :   「そっかあ、ゆっくりのほうがいいこともあるんだね。」

男の子・女の子    :  「うん。」二人がうなずきました。

 そのあと、女の子は、急いでやってしまった宿題の失敗の話を、男の子は、新幹線の旅と散歩を比べた話を作文に書きました。

* アリー塾長の一言

 「速い」と「遅い」は、何かと比べてはじめて「速い」とか「遅い」とか言うことのできる相対的な概念です。それぞれの価値も相対的なもので、「速い」ほうがいいときもあれば、「遅い」ほうがいいときもあります。

 今回の授業では、「速い」という言葉(概念)と、その価値について考えることとなりました。

 
 
 
 
 
 ところで、速いものをたくさん出して、「すごいね、すごいね。」、「速いっていいこと?」って聞いたら、誰だって「いいことーっ!」って答えますよね。ちょっと意地悪だったかな?でも、「ほんと?」と聞いたら、遅いほうがいいことがちゃんと出てきた。すばらしい!

 二人、よく考えられたよね。そうそう、宿題はゆっくりじっくり取り組まないとね。嫌なものを早く片付けたいからって、急いでやったらまちがえちゃうよね?

 
 それから新幹線と散歩の景色の違い!あれにもびっくり!旅の楽しみと移動のスピードについて書かれている文章ってけっこうあって、時々入試問題なんかにもなっています。何も知らずにそのあたりにズバリと切り込んでくるとは…。

 
 二人ではないけれど、本当に、速いほうがいいときもあれば、遅いほうがいいときもあります。事務仕事はすばやく効率的に、オフのときには、ゆっくりと一杯のお茶を心ゆくまで味わって飲む。おいしいお茶、幸せですよねー。楽しいことはゆっくりのほうがいいなあ。あ、速いのが楽しいこともある!ジェットコースター!!

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