2015年1月24日土曜日

「今、ここ」にあるということ

 先日ある生徒に、こんな質問をしてみました。「勉強ってなんのためにするんだと思う?」これは卑怯な大人の質問です。案の定、彼女はこう言いました。「将来希望する職業につくため」。この生徒は中学一年生。すなおで、コツコツと一生懸命勉強するまじめな女の子です。

 将来つきたい職業があるというのはすばらしいことです。そのような志をもって勉強するのは立派なことです。でも、そうやってする勉強はおもしろいかな?将来のことを考えながらする勉強って楽しい?勉強ってもともと、おもしろいものでも楽しいものでもないから仕方ない?それって本当ですか?

 この女の子は、勉強に時間をかけているわりには結果が出ないということでした。そこで、勉強方法を見直すと同時に、勉強するってそもそもどういうこと?と徹底的に話し合うことにしました。女の子はまじめなので、教えられたことをすべて覚えなければならないと考えているようでした。勉強するって覚えることなのでしょうか?

 勉強することの本質が覚えることだとすると、私はここまで長く勉強し続けてくることはできませんでした。覚えることが勉強だったなら、私にとってそれは難行苦行になってしまうからです。私が勉強し続けてこられたのはたぶん、勉強すること自体がおもしろかったからです。楽しかったから、やめられなかったということなのです。

 勉強することの本質を、私は、知ること、考えること、分かることだと思います。これらの要素のすべてには感動がともないます。知ることはうれしい、考えることは楽しい、分かることは喜ばしい。それらは幸せな感情です。

 ところが、もしも勉強とは覚えることで、しかも将来のためにやらなければならない義務だったとしたら、そのような幸せな感情とともに勉強することができるでしょうか?「~しなければならない」という義務観念は、気持ちを重たくしてしまいます。

 勉強すること自体を楽しむためには、とりあえず将来のことは考えないで、「今、ここ」に集中するとよいのではないでしょうか?「今、ここ」で知ることがうれしい、「今、ここ」で考えることが楽しい、「今、ここ」で分かることが喜びだ、そんな感じです。

 そうやって勉強すると心が動きますから、必然的にいろいろなことを覚えていきます。感動しながら知ったことは、忘れようとしても忘れることができません。「今、ここ」に集中して感動しながら学ぶと、結果的に、学んだことが知識として定着するのです。

 このような勉強の仕方は、勉強する時間を充実させるということです。自分の「今、ここ」の時間を充実させるということです。それは大げさに言うと、自分の生を充実させるということにもつながります。「今、ここ」に集中すると、ワクワク・ドキドキしてきます。

 「今、ここ」に集中する例としては、旅行することがあげられます。私たちは誰でも、旅先の土地に過去をもちません。いずれ住むことになる土地を下見に行ったのでもないかぎり、私たちの未来もそこにはありません。
 

 旅先で私たちは、まさに「今、ここ」に生きることに集中します。今、見ている景色が美しい、今、味わっている料理がおいしい、今、感じている空気が心地よい、知識と五感を総動員して、私たちは旅を楽しみます。旅における過去とは、せいぜい昨日会った土地の人であり、未来とは、明日行く名所のことであるに過ぎません。

 そうして私たちは、旅先で始終ワクワク・ドキドキしています。次に何に出合えるのか、誰と話ができるのか、何が起こるのか、そんな楽しい経験をするために、私たちは旅行するのです。

 同様の経験は、ライブのエンターテインメントを観にいったときにできます。前もって撮り終わっている映画などを観るのとは違って、「今、ここ」で起こっていることに立ち会うことになるからです。「今、ここ」では、何事も起こりえます。役者が間違うことも、オーケストラのトランペットが裏返った音を出すこともあります。観客の協力も必須です。観客の一人が妨害などしたら、その舞台は台無しになってしまいます。

 「今、ここ」の場ではそのように、一人一人に大きな責任があります。そんなことも、ワクワク・ドキドキの理由かもしれません。そうしてその場にいる全員で、知識と五感をとおして「今、ここ」にあることを楽しむのです。

 「今、ここ」に集中して勉強すると、旅や観劇と同様に、ワクワク・ドキドキしながら学ぶことができます。そしてその結果、感動しながら覚えることができます。勉強は本来おもしろいものです。楽しくてやめられないものです。そのためには、過去や未来にとらわれず、「今、ここ」に集中することが大事なのではないでしょうか?

 そしてそうやって勉強していった結果、知識が本当の意味で自分のものとなり、考える力が身について、将来の夢が実現するのだと、私は信じていいます。

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