2015年3月21日土曜日

「価値」について考える

*その島に暮らす人たちは、週に一回、別の島で開かれる「交換の市」に行って、海でとっ   た魚や貝を必要なものと交換します。

Yくん          バケツ5分の2くらいの魚を、マンゴー9個とトウモロコシ10本とバナナのふ
              さ4つと交換するって、なんか変じゃない?

アリー塾長  :    ん?どういうこと?もしかして、魚バケツ5分の2って、少ないってこと?

Yくん     :     うん。バケツ5分の2って、ちょっとしかない。それなのに、マンゴー9個
              とトウモロコシ10本とバナナのふさ4つって多いと思う。

アリー塾長  :    いいところに気が付いたねえ。確かにそうだねえ。じゃあ、なんでだと思う?

Yくん     :     うーん?

アリー塾長  :    価値の問題じゃないかな?

Yくん     :     価値?

アリー塾長  :    そう、価値。バケツ5分の2の魚をマンゴー9個とトウモロコシ10本とバナナ
              のふさ4つと交換した人にとっては、魚が貴重で価値があったんだよ。
              だからたくさんの品物と交換したんだよ。価値のある貴重なものは高いじゃ                                        
              ない?宝石なんてあんなに小さいのにものすごく高いでしょ?

Kくん     :     ぼくはマンゴーもトウモロコシもバナナもいらない。だって好きじゃないもん。
              ぼくだったら魚をマンゴーやトウモロコシやバナナとは交換しない。

アリー塾長  :    Kくんにとって、マンゴーやトウモロコシやバナナは価値がないんだね?
 
Kくん     :     うん。ぼくだったら魚を米と古着と交換する。

アリー塾長  :    そっかあ。Kくんにとってマンゴーやトウモロコシやバナナは、米や古着より
              価値がないんだ。 同じものでも人によって価値があったりなかったりするん
              だね。価値は人によって違うんだね。ほかにも同じものでも価値が違うって
              ことがある?

Yくん     :     災害のときは食料が貴重。

アリー塾長  :    そうだねえ、本当にそうだね。災害のときは食料の価値が高くなるよね。
              価値って、人によっても変わるけど、ときや場合によっても変わるんだね。
              そのほかにも、価値は場所によって変わるよ。国によって価値が変わるもの
              があるからね。
               
              みんなにとって価値があるものってなに?価値があることでもいいよ。

              (ちょっと古びた洋書のポップアップ絵本を見せて)
              
              私にとって価値のあるものはこれ。これは昔イギリスのロンドンから買って
              きた本。今、こういう本、ロンドンに行っても売ってないんだよ。だから価値が
              ある。

Yくん     :     …それから、その本には思い出がある。

アリー塾長  :    そうそう!だから、私にとって価値がある。みんなはどうかな?ものでは
              なくて、ことでもいいよ。

Rちゃん    :    生きてることには価値がある!

アリー塾長  :    生きてること!?それはいい答えだね!!Rちゃん、生きてることにはなん
              で価値があるの?
  
Rちゃん    :     生きてると、楽しいことやうれしいことがたくさんあるから!

アリー塾長  :     Rちゃん、生きてるって楽しい?

Rちゃん    :     うん!!

アリー塾長  :     それはすばらしいことだね。生きてるって価値があるんだね。あ、それか
               ら、みんなが生きてることに価値がある理由はほかにもあるよ。だって、み
               んなが生きてると喜ぶ人がいるでしょ?

Kくん      :     あ、いる!

アリー塾長  :     だれ?

Kくん      :     お母さん。


*アリー塾長の一言

 物々交換の話から「価値」について考えることとなりました。対話の中にも出てきたように、同じものでも、人によって、ときと場合によって、あるいは地域によって、その価値は変わります。ものだけではなく、あることの価値も同様にさまざまな条件で変動します。

 「生きていること」に価値を発見したのはすばらしいことでした。私も、まさかそんな答えが返ってくるとは予想していませんでした。
 
 実は、べつの生徒も、生きていることには価値があると思ったそうです。そしてそのことをお母さんに言ったところ、お母さんは、「生まれたら生きるのがあたりまえだから、それでは答えにならない」とおっしゃったそうです。

 ですが、あたりまえに生きるのは、もしかしたらそんなにあたりまえではないかもしれません。生きているといろいろなことがあるからです。最悪の場合、災難にあって、命を落としてしまうことすらあるからです。

 そう考えると、Rちゃんの「生きてることは楽しい!」という答えはすばらしい!せっかく生きているんだから、毎日、楽しいことやうれしいことをたくさん経験したいものです。

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