「ことは塾」は、千葉県千葉市を拠点とした、対話型の国語(日本語)と作文の専門教室です。この未曾有の変化の時代に、自分で考え、意見を伝えられ、行動のできる人材を育てることを目的としています。このブログでは、実際のクラスで行われた対話の様子や、日ごろ気づいたことなどをつづっていきます。 日本人の母語である日本語は、日本文化特有の価値意識や思考形式そのものです。「ことは塾」は、その日本語をつかった「対話」によって、生徒の考えを引き出します。生徒は日本語の対話をとおして、自身の思考を深め、日本語で考え、日本語で表現していくことを学びます。 * 対話の中の「アリー塾長」は、ことは塾塾長もりいのニックネームです。
2014年1月23日木曜日
「速い」っていいこと?
ある日の対話・作文クラスの授業です。
問いかけは、「速いってなんだろう?」でした。
アリー塾長 : 「 童話に、ウサギとカメが競争した話があったよね?ウサギは、本当はカメより速く走れる のに、途中で昼寝をしたから、カメに抜かれて、競争に負けちゃったんだよね。」
「ウサギはカメより走るのが速い。速いって、何かと比べて、速いって言えるんだね。それより遅いものがあるから、速いって言えるんだね。」
アリー塾長 : 「 世界には速いものがたくさんいる。人間では、金メダルのボルト!動物ではチータが一番速い。」
「人間の作った道具も速い。」
「自動車や、新幹線や、ジェット機。」
「新幹線、乗ったことある?」
…小学校3年生の二人(男の子と女の子)はうなずきます。
男の子 : 「秋田に行ったとき、新幹線に乗った。すごく早く着いた。」
アリー塾長 : 「まだまだ速いものがあるよ。音!」
「地球が回ってる速さ。」
「人工衛星や宇宙船。」
「地球が太陽のまわりを回るのは、それよりもっと速いみたいだよ。」
「それから、もっともっと速いのが光!」
「光は速いよ。音よりずっと速いよ。」
「雷を思い出してみて。」
「ピカッと稲妻が光ってから、少したってゴロゴロっていう音がしてくるでしょ?」
…二人、感心して聞いています。
アリー塾長 : 「光は速いんだね。これからほかに見つかるかもしれないけど、今のところ、光より速いものはないって考えられてるんだって。」
「すごいね、光。月からの光は、一秒ちょっとで地球に届くんだって。」
…さて、ゆっくり一回深呼吸して、聞いてみました。
アリー塾長 : 「速いっていいこと?」
男の子・女の子 : 「いいことーっ!!」
…二人同時に元気よく答えました。
アリー塾長 : 「ほんとう?」
「なんで?」
男の子 : 「新幹線は速いから、早く行きたいところに行ける。だから、速いっていいこと。」
女の子 : 「オリンピックでは走るのが速い人が金メダル。だから、速いっていいこと。」
アリー塾長 : 「そっかあ、みんなは速いことはいいことだって思うんだ。」
「でもさあ、遅いほうがいいことってない?」
…しばらく間があきました。
…女の子が小さな声で話し始めました。
女の子 : 「ゆっくりやらなかったから、宿題をまちがえて、お母さんに怒られた。」
アリー塾長 : 「○○ちゃん、怒られちゃったの?」
女の子 : 「うん。急いでやったら、まちがっちゃったの。」
アリー塾長 : 「そっかあ。」
女の子 : 「だから、速くやることがよくないときもある。」
アリー塾長 : 「宿題は、じっくり時間をかけてやったほうがいいんだね。」
女の子 : 「うん。」
アリー塾長 : 「ほかにゆっくりのほうがいいことがある?」
男の子 : 「新幹線は行きたいところに速く着くけど、あんまり景色が見えない。」男の子が言い出しました。
アリー塾長 : 「景色?」
男の子 : 「散歩は歩くからゆっくりだけど、いろんなものが見られる。」
アリー塾長 : 「どんなものが見られる?」
男の子 : 「景色。よその家とか、生えてる草とか、花とか、木とか、ゆっくり見られる。」
アリー塾長 : 「景色がゆっくり見られるって楽しい?」
男の子 : 「うん。」
アリー塾長 : 「そっかあ、ゆっくりのほうがいいこともあるんだね。」
男の子・女の子 : 「うん。」二人がうなずきました。
そのあと、女の子は、急いでやってしまった宿題の失敗の話を、男の子は、新幹線の旅と散歩を比べた話を作文に書きました。
* アリー塾長の一言
「速い」と「遅い」は、何かと比べてはじめて「速い」とか「遅い」とか言うことのできる相対的な概念です。それぞれの価値も相対的なもので、「速い」ほうがいいときもあれば、「遅い」ほうがいいときもあります。
今回の授業では、「速い」という言葉(概念)と、その価値について考えることとなりました。
ところで、速いものをたくさん出して、「すごいね、すごいね。」、「速いっていいこと?」って聞いたら、誰だって「いいことーっ!」って答えますよね。ちょっと意地悪だったかな?でも、「ほんと?」と聞いたら、遅いほうがいいことがちゃんと出てきた。すばらしい!
二人、よく考えられたよね。そうそう、宿題はゆっくりじっくり取り組まないとね。嫌なものを早く片付けたいからって、急いでやったらまちがえちゃうよね?
それから新幹線と散歩の景色の違い!あれにもびっくり!旅の楽しみと移動のスピードについて書かれている文章ってけっこうあって、時々入試問題なんかにもなっています。何も知らずにそのあたりにズバリと切り込んでくるとは…。
二人ではないけれど、本当に、速いほうがいいときもあれば、遅いほうがいいときもあります。事務仕事はすばやく効率的に、オフのときには、ゆっくりと一杯のお茶を心ゆくまで味わって飲む。おいしいお茶、幸せですよねー。楽しいことはゆっくりのほうがいいなあ。あ、速いのが楽しいこともある!ジェットコースター!!
http://www.ko-to-ha.com/
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