「ことは塾」は、千葉県千葉市を拠点とした、対話型の国語(日本語)と作文の専門教室です。この未曾有の変化の時代に、自分で考え、意見を伝えられ、行動のできる人材を育てることを目的としています。このブログでは、実際のクラスで行われた対話の様子や、日ごろ気づいたことなどをつづっていきます。 日本人の母語である日本語は、日本文化特有の価値意識や思考形式そのものです。「ことは塾」は、その日本語をつかった「対話」によって、生徒の考えを引き出します。生徒は日本語の対話をとおして、自身の思考を深め、日本語で考え、日本語で表現していくことを学びます。 * 対話の中の「アリー塾長」は、ことは塾塾長もりいのニックネームです。
2014年8月23日土曜日
お母さん、いつも幸せでいてね
読書感想文の季節です。私も生徒と一緒に、課題図書の一冊を読んでみました。『かあちゃん取扱説明書』(いとうみく作・佐藤真紀子絵、童心社、2013年5月。)です。
『かあちゃん取扱説明書』の主人公、哲哉はいつもかあちゃんに怒られてばかり。哲哉にも言い分があります。だから、そんなかあちゃんのことを作文に書きました。そうしたら、先生にはほめられるし、とうちゃんには大爆笑されます。
とうちゃんは言います。「扱い方を間違わなければ、かあちゃんをあやつるのなんて簡単だ。」かあちゃんにも機械と同じように、取扱説明書を作ればいい!哲哉は「かあちゃん取扱説明書」をつくることを決心します。
哲哉のトリセツは、役に立ったんだか立たなかったんだかよくわかりません。トリセツどおりにやって、うまくいったような時もあれば、うまくいかなかったような時もあります。かあちゃん自身も、哲哉にはあいかわらずでも、職場では強くて優しくてかっこいいし、なんだかよくわかりません。とにかく、かあちゃんの気分をよくしてやりさえすればいいみたいなのですが。
そんなある日、哲哉はかあちゃんが大切にしているゴブレットを壊してしまいました。てっきり怒られると思った哲哉でしたが、かあちゃんは怒りません。哲哉は翌日からお手伝いを一生懸命します。かあちゃんは毎日楽しそうです。
その日の夕飯のおかずは焼き肉でした。哲哉ととうちゃんにだけお肉を食べさせながら、かあちゃんは宣言します。「私は本場の韓国で焼き肉を食べるからいいの!」韓流ファンのかあちゃんは、ひそかに韓国旅行を計画していたのです!
かあちゃんのきげんがよかったのは、韓国旅行が楽しみだったからです。哲哉がいい子になってお手伝いをしたからではありませんでした。ゴブレットを壊しても怒らなかったのは、かあちゃんを韓国旅行が待っていたからなのです。
* 生徒が書いた『かあちゃん取扱説明書』の感想文の一部です。
「私は哲哉がかあちゃん取扱説明書をつくった理由がわかります。おかあさんにおこられると悲しいからです。私もおかあさんにおこられると悲しいです。」
「私は、かあちゃん取扱説明書はいらないなと思いました。かあちゃんは韓国旅行が楽しみだからきげんがよかったからです。」
「私のおかあさんもいつもきげんがいいといいなと思いました。」
この本を読むと、お母さんが子どもの振る舞いにイライラして腹をたてるのは、本当は、子どもの責任じゃないということがわかります。お母さん自身が毎日楽しく暮らしていれば、子どもの失敗も大目に見て、優しく導いてやることができると、哲哉のかあちゃんの例がおしえてくれます。
童心社のホームページで、小説家の越水利江子さんは、この本の感想を次のように言っています。
「どう生きたいか、どう生きるかは、子どもも大人も、自分自身で覚悟を決めなけらばならないのです。誰かによりかかって生きるのではなく、自分の生き方を見つけて一人でも頑張る。家族の幸せはそこからはじまるのだと…。」
越水さんの感想は、この本のもっとも核心的な部分を読み込んでのものだと思います。哲哉のかあちゃんは、韓国旅行という楽しみを見つけて、自分自身の幸せを追求します。それは決して自分勝手なことではなくて、そうするからこそ、家族にも優しくなれて、みんなが幸せになれるのです。
本には、哲哉の友達のカズオも出てきます。カズオのお母さんは一見優しいいいお母さんだけど、実は子どもにかまいすぎで、かえってカズオに嫌がられています。ですが、そんなカズオのお母さんも、昔からの夢だったお菓子屋さんで働くことになり、自分自身の生きがいを求めるようになります。
越水さんの言うように、どう生きるかを自分で決めるのには覚悟がいります。自分で決めることなので、他人のせいにはできないからです。反対に、他人を言い訳にして自分の生き方をしないで、「誰かによりかかって生き」れば楽ですが、そのような生き方は誰も幸せにしてはくれないでしょう。
自分の楽しみを見つけて幸せになることはよいことです。「お母さん、いつも幸せでいてね。」というのは、子どもの切なる願いだと私は思います。
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2014年8月10日日曜日
いつか行く旅
* 夏休みの特別企画として、「いつか行く旅」の計画を立ててみました。
旅行会社の店頭から、旅行のパンフレットをたくさんもらってきました。ガイドブックもあるだけ集めてみました。いつか行ってみたいところはどこでしょう?
旅は3回楽しめると言った人がいます。行く前と、行っているときと、帰ってきてからだそうです。その人は、「行く前は計画を立てて、準備をするのが楽しい。実際に行っているときはもちろん楽しい。そして、帰ってきてから、写真を整理したり、おみやげを配ったりするときに楽しかったことを思い出してまた楽しい。」と言っていました。
今回は、旅の最初の楽しみ、計画を立てる楽しみを味わいます。
アリー塾長 : 今日はいつか行ってみたいと思っているところへ行く旅行の計画を立てても
らうよ。旅行のパンフレットやガイドブックがたくさんあるから、行きたいところ
を選んでね。
(みんな、口元で小さく笑いながら、顔を見合わせてパンフレットを探りま
す。)
* 行き先は、イギリス・ロンドン、屋久島、沖縄、ハワイ(沖縄とハワイは一人が二か所選びました。)となりました。
アリー塾長 : 行き先は決まったかな?じゃあ、計画を立ててもらうよ。計画を立てるときに
考えることを書くから、それを見ながら書いてね。
* 計画を立てるときのポイントをあげます。
① 行き先 … どうしてそこへ行きたいのか
② いつ行くのか … 何月何日
③ どのくらいの期間 … 何泊何日
④ だれと行くのか … 全部で何人
⑤ どこ・何を見学するのか … 名所・旧跡、そこの博物館にしかない展示品など
⑥ 行った先で何をしたいのか … そこでしかできない遊びや体験など
⑦ どこに泊まるのか … ホテル、旅館、民宿、ホームステイ、ユースホステルなど
⑧ おみやげ … 買って帰りたいもの
⑨ 食事 … そこで食べたいもの
⑩ 交通 … 電車、飛行機、バス、車など
⑪ 予算
* 一人目の女の子の沖縄旅行の計画です。
行き先 … 沖縄
8月23日出発のジャングルピクニックツアー
行きたい理由 … カヌーをこいでみたいし、いろいろな木とかを見たいから。
期間 … 3泊4日
見学することろ … 川(川がきれいなのか?)
泊まるところ … ホテル
だれと行くのか … 家族
交通 … 沖縄では車
予算 … 200,000円
* 女の子は水と泳ぐことが大好きです。旅の行き先も沖縄、ハワイ、と、楽しく泳げるところが 選ばれました。ハワイでは、大好きなプールに行って、「すべりだいですべって、プールにいきおいよく入りたい」そうです。カヌー漕ぎもとても楽しそうですね。
* 男の子の屋久島旅行の計画です。
行き先 … 屋久島
行きたい理由 … 世界遺産を見て、つりをしたり、海で泳いだり、魚を見たりしたい。
泊まるところ … ホテル・山や海などの景色がよいところ。
だれと行くのか … お父さんとお母さんと行く。
行ってみたい・見てみたいところ … トローリのたきを見たり、屋久島をまわりたい。
食べたいもの … 屋久島にしかない食べもの、魚
交通 … 飛行機・レンタカー
いつ行くのか … 6月22日~26日、3泊4日
予算 … 272,900円(3人分)
* 男の子はつりが好きです。この夏も家族でつりのできるところに旅行するそうです。屋久島の世界遺産のことはどうして知っていたのでしょう?この日はお母さんとお会いできたので、「帰ったら二人で、屋久島のことについてたくさん会話をしてください。」とお願いしました。
* 二人目の女の子の行き先はイギリス・ロンドンです。
行き先 … イギリス
行きたい理由 … 国会議事堂とビッグベン、バッキンガム宮殿を見たいから。
期間 … 5泊7日、4月13日~19日。
やってみたいこと … おいしいものを食べて有名なものを見る。
* この女の子は、以前、古い建物を見るのが好きなので、海外、特にイギリスや北欧に行ってみたいと言っていました。女の子はこのごろ英語の勉強にもう一つ身が入らないとのこと。イギリスはもちろん、英語ができると海外旅行が飛躍的に楽しくなります。いつか行く旅を目標に、英語、がんばってみようね!
* アリー塾長の一言
みんなまだまだ、世界にはどんな国があって、どんな人が住んでいるとか、日本にはどんなところがあって、どんなすばらしいものがあるとかいうことをよくわかっていません。これからいろいろな地域について学んでいって、ぜひ、いつか行く旅の旅先に、そういうところを選んでもらえるといいかな?と思います。
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