2016年6月19日日曜日

五感で学ぼう、そして言葉にしよう!

 今年も夏休みが近づいてきました。夏は太陽のエネルギーも最大になります。そのエネルギーを体いっぱいにうけて、こころも体も大きく成長したいものです。ことは塾では、今年も夏休みに、体験型の授業をおこないます。

 体験授業の一つは、和菓子屋さんでの和菓子作り体験です。和菓子、特にお茶席で出される和菓子には、日本人のもてなしの精神や美意識などが凝縮されています。和菓子は日本文化を学ぶための、恰好の素材の一つです。

 そんな和菓子はいったいどのように作られるのでしょう?和菓子を作ることには、どんな工夫や苦労があるのでしょう?

 もう一つの体験は、牧場体験です。私たちが日常的に食べている食品は、塩以外、すべて生きていたものか、生きている動物が産出したものです。私たちが飲んだり食べたりしている牛乳やバターやチーズも、生きている牛や山羊などが出したものをもらっているのです。
 
 牧場では、いつもただおいしく食べているアイスクリームやバターを自分たちで作ってみることもできます。牛や羊などの動物とふれあい、牛乳を材料とした食べ物を作ってみることで、食べ物をとおして見えてくる、動物と私たちとのつながりについて考える機会をえることができます。

 和菓子作りも牧場体験も、新鮮な発見をともなった、楽しい経験となることでしょう。

 ところで、楽しい体験は、体験しただけで終わらせてしまってよいものでしょうか?せっかくの経験を、確かな記憶としてとどめておくために、できることはないのでしょうか?

 ハンナ・アーレントはこんなふうに言っています。

 リアリティは、事実や出来事の総体ではなく、それ以上のものである。リアリティはいかにしても
 確定できるものではない。「存在するものを語る(レゲイン・タ・エオンタ)」人が語るのは、つねに
 物語である。そしてこの物語のうちで個々の事実はその偶然性を失い、人間にとって理解可能な
 何らかの意味を獲得する。

 何かの経験を、自分が経験した確かな現実として受け容れ、意味のあるものとして記憶し、今後に生かしていくためには、その経験を物語にしなければなりません。物語るとは、すなわち言葉にすることです。経験を言葉にして語り、語ることによって、そこに意味を見出す、つまりそのようにしてそれを物語にすることによって、経験はリアリティを獲得するのです。

 物語となってリアリティを獲得した経験は、意味をもっているので、以後はそれぞれのこころの糧となって、長く生き続けることでしょう。

 さて、以上は経験を言葉にすることのちょっと難しい理論でした。ですが、方法はそんなに難しくはありません。要は、体験したことを言葉にして語ればよいのです。さらに、それを書けばよいのです。

 体験したことを文章にしてみると、頭の中が整理されて、いろいろなことがわかってきます。その体験が自分に教えてくれたこと、その体験の自分にとっての意味、そのほかさまざまなことがわかってきます。それらを書けばよいのです。そうすれば体験は、生きていくうえでも役に立つ、確かな経験として、記憶の中に定着します。

 和菓子はとても美しいです。和菓子は食べて舌で味わう前に、目でも楽しむことができます。反対に、牛や羊は臭いです。アイスクリームはとてもおいしいのに、生きものは臭うのです。体験をすると、このように五感を使うことになります。五感で学ぶことができるのです。

 五感で学んだあとは、それを言葉にしてみましょう。言葉にし、知的な反省をくわえることによって、体験は確かな経験として蓄積されていきます。

 ことは塾では、体験と、それを文章にしていくまでの講座をご用意しております。夏期特別講座へのご参加を、こころよりお待ちしております。

 * H・アーレント著、引田隆也・齋藤純一訳、『過去と未来の間』、みすず書房、
                                       1994年9月、357ページ。

http://www.ko-to-ha.com/
    

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