2025年8月30日土曜日

アメちゃんの話

 教室では、作文を書き始めてもらう前に、生徒ちゃんたちにアメちゃんを配ります。一人一個。なにか特別なことがあったときにはもう一個。一生懸命資料を読んで、たくさん意見を言ってもらったあとで配ります。ささやかなご褒美です。


 ときどき、このアメを、お母さんにたのんで買ってもらうという話を聞きます。お母さんと二人で、お菓子屋さんでさがしたという話を聞きます。帰り道、お菓子屋さんで買って帰ったと言われることもあります。教室で配られるのと同じものがいいのだそうです。教室で配るのは、ソーダ味のアメ、ミルク味のアメ、カフェオレ味のアメです。


 この間は、ソーダ味のアメをさがしたという話を聞きました。買って帰ってみたら、同じ味ではなく、がっかりしたそうです。教室のアメのメーカーはどこかとお母さんに聞かれました。ソーダ味のアメは、メーカーによって、そんなにちがうのでしょうか。教室にあるアメがおいしくて、別のメーカーのものはおいしくないのでしょうか。


 そんなことはないと思います。どこのメーカーのアメも、それぞれおいしいはずです。ソーダ味のアメも、ミルク味のアメも、どこのメーカーのものでもいいはずです。それなのに、どうして教室のアメと同じアメがいいのでしょうか。


 教室で配るアメには、おそらく、特別な意味があるのでしょう。ちょっと我慢したり、ちょっとがんばったりしたあとでなめるから、おいしいのでしょう。アメがおいしいのは、ちょっと我慢したり、ちょっとがんばった自分はえらかったなあ、と思えるからなのかもしれません。


 教室でもらうアメを食べたいと思うのは、アメを食べて、がんばれる自分を思い出したいと思うからなのかもしれません。


 

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